
Graser TECHTALKS 2026
電子設計分野では、IC、先端パッケージ、プリント基板 (PCB)、システム設計、データセンター、さらには実機アプリケーションに至るまで、設計対象を横断して最適化する「システムレベル設計」への移行が加速しています。こうしたシステムレベルでの最適化を支える中核技術として、人工知能 (AI) の活用が急速に広がっています。
Graser Technology は 6 月初旬、年次技術フォーラム「Graser TECHTALKS 2026」を開催いたしました。本年のテーマは「AI in Sync: Intelligent Design, Accelerated Manufacturing」です。
イベントでは、AI を活用した設計・解析・製造ワークフローの高度化をテーマに、Cadence、Giga Computing、National Taiwan University of Science and Technology (NTUST) をはじめとする業界の専門家やユーザー企業、Graser Technology のエンジニアが登壇しました。電子設計を取り巻く最新動向や AI の活用事例を紹介するとともに、AI 時代における電子システム設計の方向性について議論が交わされました。
Graser Technology・Chairwoman の Lillian Pan 氏は、開会のあいさつで次のように述べました。「弊社は 30 年以上にわたり、迅速な対応、専門性の高い技術支援、そして長期的なパートナーシップを通じて、お客様の製品開発を支援してきました。今後も AI をエンジニアリングワークフローへ積極的に取り入れ、先進的な設計環境を提供することで、台湾の半導体・電子産業の競争力強化に貢献してまいります」
AI が電子設計のワークフローを変える
基調講演では、Cadence Corporate Vice President, APAC and Japan の Michael Shih 氏をお迎えし、「Paradigm Shift of System Design in the AI Era」をテーマに講演いただきました。
ご講演で同氏は、ムーアの法則の限界や先端プロセス技術の高コスト化を背景に、電子設計はこれまで以上に複雑化していると説明され、設計対象は単一チップから、先端パッケージ、PCB、システム、さらには複数の物理領域を横断する設計へと広がっており、EDA にもシステム全体を見据えた設計環境が求められているとの見解を示されました。
また、Cadence が展開する、AI、EDA、IP、システム設計・解析、コンピュテーショナルソフトウェアを統合した「Intelligent System Design Platform」について、さらに AI 活用を「Design for AI」と「AI for Design」の2 つの方向から推進していることについて述べられ、AI インフラ構築を支援するとともに、AI そのものを設計プロセスへ組み込むことで、設計品質と開発効率の向上を目指す取り組みが紹介されました。
加えて、AI エージェントを設計ワークフローへ導入することで、設計目標の理解からタスク分解、設計実行、検証に至るまでを支援し、設計サイクル全体の効率化を実現する取り組みについてもご紹介いただきました。部品配置や配線、レイアウト、設計ルールチェックといった反復作業を AI が担うことで、エンジニアはシステムアーキテクチャ設計や新たな技術開発により多くの時間を充てられるようになるとの展望が示されました。
AI データセンターでは CPU の役割も変化
Giga Computing Business Development Director の Eric Kao 氏より、AI データセンターの最新動向についてご講演いただきました。
ご講演では、生成 AI や AI エージェントの普及に伴い、推論処理の需要が急速に高まっていることから、これまで AI の学習処理を中心としてきたデータセンターが、推論処理を重視した構成へと移行している現状についてご説明いただきました。
その中で、CPU については、従来の GPU を補完する役割から、AI ワークロード全体を制御・管理する中核的なコンポーネントへと、その役割が拡大していると述べられました。
また、今後の異種コンピューティング環境においては、最適なハードウェア構成を実現するシステム設計が、競争力を左右する重要な要素になると指摘されました。
さらに、同社ではサーバー開発に加え、GPU サーバー、液冷システム、HPC、OCP、AI インフラサービスまで事業領域を拡大していることにも触れられ、AI データセンター市場においては、システム全体を最適化する統合技術が重要になるとの見解を示されました。
AI はロボティクスなど実世界への応用も加速
NTUST Department of Mechanical Engineering 教授であり、Center for Intelligent Robotics (CIR) 所長の Po-Ting Lin 氏より、AI を活用したロボットの障害物回避技術についてご講演戴きました。
ご講演では、ロボットが人や障害物を検知した際に、安全性と作業効率を両立した最適な経路をリアルタイムで算出することの重要性についてご説明いただきました。また、AI モデルを活用することで、従来手法と比較して、より高速な経路生成が可能になることをご紹介いただきました。
さらに、同大学が人協働ロボット、無人航空機 (UAV)、双腕ロボットなど、幅広い分野で研究開発を進めていることにも触れられ、安全性と生産性の両立に向けた AI 活用の取り組みについてご紹介いただきました。
PCB 設計からマルチフィジックス解析まで AI 活用を拡大
午後の技術セッションでは、「電子システム設計自動化」と「マルチフィジックスシミュレーション」をテーマに、最新の技術やソリューションをご紹介しました。
Graser Technology からは、Cadence Allegro / OrCAD X 25.1 および Allegro X AI の最新機能について、また、AI を活用した PCB 設計の自動化や設計効率の向上に向けた取り組みをご紹介しました。
さらに、AIC、Supermicro、Cadence の技術者からは、Sigrity、Clarity、Celsius 3D、Sigrity HPC、Aurora を活用した PI 解析、電気・熱連成解析、AI サーバー設計、マルチフィジックス解析について、最新事例が紹介されました。
あわせて、自社開発ソフトウェア「GraserWARE」「GIMS」「CAMPro」の最新版を発表し、回路信頼性評価、BOM 管理、製造データ検証などの機能強化についてご紹介しました。
また、「GraserWARE MSAPack」では、シミュレーションスケジュール管理、スタックアップ変換、S パラメータのポート名称最適化、温度依存材料パラメータフィッティング、自動 Power Tree 生成などの新機能を追加し、SI/PI 解析の効率化とデータの品質向上の支援を示しました。
AI 時代の競争力は「設計データの連携」に
Graser TECHTALKS 2026 では、AI 時代における競争力は、個々のツールの性能向上だけではなく、設計・解析・検証・製造データをシームレスに連携させ、システムレベルで開発プロセス全体を最適化できるかどうかが重要であることが示されました。
AI は、設計支援ツールとしての活用にとどまらず、電子設計から製造までをつなぐ共通基盤へと進化しつつあります。今後は、設計プロセス全体を横断して AI を活用することが、半導体・電子機器開発における新たな競争力となることが期待されます。
Graser Technology について
Graser Technology は、電子設計自動化 (EDA) ソリューションおよびエンジニアリングサービスを提供し、設計、解析、製造を統合するソリューションを通じて、半導体・電子機器メーカーの開発効率向上と製品イノベーションを支援してまいります。